タワーレコードの創設者でCEOのラス・ソロモンが、妻のパティとウイスキーを飲みつつオスカーの授章式を見ながら92歳で死去した。ソロモンは音楽を愛する高校中退者で、自分の育った故郷サクラメントにタワーレコードを創設した。ソロモンが生まれたサンフランシスコに1968年に開店した3店舗目が大成功したのは、サンフランシスコのロックシーンがグレイトフル・デッドやジャニス・ジョプリン、ジェファーソン・エアプレーンやサンタナ他、多くのアーティストにより爆発的な盛り上がりを見せたタイミングも大きかった。彼のコンセプトである音楽のスーパーマーケットは、1970年ロサンゼルスのサンセット・ストリップで開店した時に更なる発展を見せる。タワーの日本1号店は1980年札幌で開店、同時にアメリカ東海岸のニューヨーク市でも店を開いている。タワーレコードはその頂点において、18ヶ国に店舗を持ち、10億円以上の売り上げを誇っていた。成功の翳りの理由は手を広げすぎた事で、同時に巨大企業がCDを安価に売り出したり、ナップスターのような業者が違法な無料ダウンロードなどを開始したことも理由に挙げられるだろう。2002年にはタワーの日本法人を売却。現金注入するも結局2006年には破産を申告する。ソロモンは音楽業界の象徴とも言える人物で、カジュアルで楽しいことが好きな、フレンドリーなスタイルでよく知られ、従業員(25年間タワーレコードに在籍した筆者も含む)や、音楽業界、音楽を愛する多くの人々に愛されていた。2015年にはソロモンとタワーのエピソードがコリン・ハンクスによってドキュメンタリー映画にもなっている。彼の偉業はニューヨーク・タイムズ、ワシントンポスト、ローリング・ストーン、CNNなど世界中のメディアでストーリーになっている。
愛と敬意と共に、ラス・ソロモンの心よりの冥福を祈る。