年末が迫り来る中で、各国のメディアが“ベスト・オブ・2008年”リストを続々と発表、もしくは近日中に発表する予定だ。真っ先にリストを発表した雑誌 の1つであるイギリスのQマガジンは、1)キングス・オブ・レオン、2)フリート・フォクシズ、3)コールドプレイ、4)ヴァンパイア・ウィークエンド、 5)グラスヴェガスを上位5組に選んだ。このうち3組はアメリカのバンドだが、母国よりもイギリスでの人気が高いのが特徴的だ。テネシー郊外出身の3人兄 弟と従兄弟から成るキングス・オブ・レオンも、アメリカよりイギリスとオーストラリアで注目を集めている。これまでにリリースした4枚のアルバムはアメリ カのチャートで113位、55位、35位、5位。それに対してイギリスでは3位、3位、1位、1位という記録を達成しており、最近ではシングル「セック ス・オン・ファイヤー」が1位を獲得している。シアトルのサブ・ポップ所属のフリート・フォクシズは、ヴァーカルの方向性がビーチ・ボーイズや CSN&Yとよく引き合いに出されるバンドだ。アルバムはイギリスで11位を獲得したが、アメリカでは67位に終わっている。ニューヨークを拠点 に活動するヴァンパイア・ウィークエンドは、アフリカっぽいテイストのポップ・ミュージックで“評論家のお気に入り”としてここ数年大絶賛を浴びている。 アルバム『オックスフォード・コンマ』はイギリスでトップ40にランクインするという人気ぶりだが、アメリカではインディーズ現象として見過ごされている 傾向が強いようだ。

Chic (シーク)

ディスコ・ブーム絶頂期だった1978年から79年まで、メガヒット曲「ラ・フリーク」と「グッド・タイムス」を きっかけに絶大的な人気を集めたバンド。この成功を機にバンドの中心メンバーだったベーシストのバーナード・エドワードとギタリストのナイル・ロジャーズ は売れっ子プロデューサーとして、後にシスター・スレッジ、ダイアナ・ロス、デヴィッド・ボウイらを手がけるようになる。「グッド・タイムス」は、ラップ 史上初のヒット曲として大きな評価を受けたシュガーヒルズ・ギャングの「ラッパーズ・デライト」にサンプリングされたことで、音楽史上でも重要な位置を占 める作品となっている。この曲は多くのラッパーにサンプリングされている他に、クイーンがリフ部分をアレンジした「アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダス ト」、ブロンディーがヒット曲「ラプチャー」の構想を得た曲として知られている。

バーナード・エドワードは1996年の来日中に、ドラマーのトニー・トンプソンはがんで2003年に他界している。ナイル・ロジャーズは音楽活動を続けているが、最近は姿をひそめている。今回はバンドにとって5回目のロックの殿堂入りノミネートとなる。

Wanda Jackson (ワンダ・ジャクソン)

1950年代後半から1960年代前半まで“ロカビリーの女王”として君臨し、日本 でナンバー1ヒットとなった「フジヤマ・ママ」(1957年)、「レッツ・ハブ・ア・パーティ」(1961年)でメガヒットを飛ばす。エルヴィス・プレス リーと交際していたことは有名で、ジェリー・リー・ルイスやバディ・ホリーらとツアーを行なった経歴を持つ。70歳になる今日も現役バリバリの彼女は、ク ランプス、リー・ロッカー・オブ・ザ・ストレイキャッツ、エルヴィス・コステロらをゲストに迎えたアルバム『ハート・トラブル』をレコーディングしてい る。

Little Anthony & the Imperials (リトル・アンソニー&インペリアルズ)

最も殿堂入りの可能性 が低いとされているバンドだが、ドラマチックなドゥーワップの影響を感じさせる特徴的な裏声で彼らが歌いあげる甘いソウル・ヒットナンバーに弱い評論家が 多いのはたしかだ。リトル・アンソニー(本名ジェローム・ゴーディン)とインペリアルズの初ヒット曲は1958年の「ティアーズ・オン・マイ・ピロー」。 追って1960年にはより風変わりな曲「シミー・シミー・コー・コー・ボップ」をリリース。1964年には「ゴーイング・アウト・オブ・マイ・ヘッド」、 1965年に「ハート・ソー・バッド」(後にリンダ・ロンスタッドがカバーしてヒット)をヒットさせる。その後バンドは頻繁にメンバー交代を続け、いつく かのマイナーなヒット曲があったものの二度と大成功が訪れることはなかった。

ロックの殿堂の2009年候補者が発表された。新たに殿堂入りするアーティスト5組は、来年4月4日に米クリーヴランドで開催される授賞式で発表される予定だ。

現 在、有力候補者として注目を集めるのはメタリカ、ザ・ストゥージーズ、ランDMC、ジェフ・ベック。その中でも殿堂入りが最も有力とされているのがジェ フ・ベックだ。世界有数の名ギタリストとして知られる彼は、すでにヤードバーズのメンバーに迎えられており、ジェフ・ベック・グループとしてロッド・ス チュワートやロン・ウッドらと素晴らしいアルバムをレコーディングしている。その他にも、ジョージ・マーティンをプロデューサーに迎えた『ブロー・バイ・ ブロー』(1975年)など数々の優れたソロ作品をリリースしている。ベックは、今日でも精力的な演奏活動とレコーディング活動と通して素晴らしい音楽を 世に送り出し続けている。イモーゲン・ヒープが2曲に参加している『ユー・ハド・イット・カミング』(2000年)は適切な評価を受けなかった作品だが、 是非とも聴いてみて欲しい1枚だ。

さて、今日は彼ら以外の、同様に素晴らしいがあまりよく知られていない候補者を次に挙げていこう。

1992 年に始まったマーキュリ・プライズ。ジャンルやセールスを問わず最優秀アルバムを音楽業界の重鎮やミュージシャンが選出するため、イギリスで最も栄誉ある 賞といわれている。今年はもはや知らない人はいない程大人気のレディオヘッドやブリティッシュ・シー・パワー、18歳のフォークロックシンガー、ローラ・ マーリング、アデル、ラスト・シャドウ・パペッツなどの強豪がノミネートされていた。しかし彼らを押しのけてエルボーの『The Seldom Seen Kid』が受賞した。

今年も米MTVビデオミュージック・アワードが先週末にハリウッドで盛大に開催された。今年はクリスティーナ・アギレラやパリス・ヒルトン、リアーナ、リ ンジー・ローハン、ケイティ・ペリー、ピンク、プッシーキャット・ドールズといった最高に魅力的な女性アーティスト達が勢ぞろいだったが、なんと言っても 主役はブリトニースピアーズだった。観客から思わず歓声が上がる程のキラキラしたボディコンなミニドレスを着たブリトニーは「Piece Of Me」で最優秀ビデオ賞、最優秀女性ビデオ賞、最優秀ボップビデオ賞の3部門を受賞した。また 最優秀ヒップホップビデオ賞は銃火器の不法所持で逮捕、起訴されニューヨークでの公判出席のため授賞式を途中退席したリル・ウェインの 「Lollipop」。昨年、一つも受賞できなかった事などで大いに不機嫌になり公式にMTVの授賞式には今後一切出席しないと宣言したカニエ・ウェスト だったが、トリのアーティストとしてパフォーマンスを行った。また大きな話題になっているのが、残念ながら今回は一つも受賞できなかったジョナス・ブラ ザーズだ。ティーン独特の甲高い声のヴォーカルとロック色の強いサウンドで今一番勢いのあるティーンロックバンドだ。

去る日曜日にカナダ版アカデミー賞のジュノ・アワード授賞式が開催された。栄冠を手にしたのは、「1234」で年間最優秀シングル賞、『ザ・リマイン ダー』で年間最優秀アルバム賞など合計5部門を制したファイストだった。2007年はレスリー・ファイストにとって大成功の1年となった。キャッチーな 「1234」がiPodのコマーシャルに起用されたのをきっかけに評論家から大絶賛を浴び、一気にメインストリームに駆け上がり成功を手にした。UKトッ プ10へのランクインや多数のテレビ出演を経験し、今年出席したグラミー賞では、『ザ・リマインダー』がサード・アルバムなのにも関わらず最優秀新人賞に ノミネートされていた。

今年のロックの殿堂入り記念式典が3月10日に開催された。マドンナはジャスティン・ティンバレイクの紹介で登場、マドンナ本人はパフォーマンスをしな かったが、同じミシガン出身のイギー・ポップがマドンナのヒット曲「バーニング・アップ」「レイ・オブ・ライト」メドレーを熱唱しハイライトを飾った。ま たルー・リードの紹介で登場したシンガーソングライター/詩人のレオナルド・コーヘンに続いて、ダミアン・ライスがコーヘンの「ハレルヤ」(ジェフ・バッ クリーがカバーして有名に)を歌った。ベンチャーズ(来年バンド結成50周年を迎える)を紹介したのはジョン・フォガティー。そして、俳優のトム・ハンク スが60年代ロックバンドのデイブ・クラーク・ファイブ(この15年ばかりCDリリースのない彼らだが、昨日アイチューンで優れたベスト盤がリリースされ た)を紹介した。ブルースハープの革命児リトル・ウォルターとプロデューサーのケニー・ギャンブルとレオン・ハフも今回殿堂入りを果たした。

2 月10日米ロスアンゼルスで開催されるグラミー賞授賞式の余興の一つとして、CCRのジョン・フォガティが中心となりロックンロールのパイオニア達へのト リビュートパフォーマンスが行われる。ロック界の大御所リトル・リチャード、ファッツ・ドミノ、ジェリー・リー・ルイスらがフォガティと共に出演する予定 だ。